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青色LED

なぜ青色LEDはノーベル賞を受賞したか?日本人による革命的発明の裏側

  • 公開日:2019.08.23
  • 更新日:2024.08.19
  • LEDビジョン

地球温暖化対策としてLED照明の導入が推奨されています。そのLEDの中でも、イルミネーションなどに用いられている青色を発する、青色(あおいろ)LEDと呼ばれる照明について紹介します。

青色LEDとは?

LEDを使用した照明は、白熱電球などよりも少ない電力で明るく光ることが知られています。

そもそも、LEDとは「発光ダイオード」という一方向に電圧を加えたときに発光する半導体の素子のことです。

以下では、その中でも青色LEDについて詳しく解説していきます。

発光ダイオードとは?その特徴は?

電流を流すと光を発する半導体素子のことをLED(light emitting diode)発光ダイオードといいますが、電気信号を直接光信号に変える機能があるため、高輝度で他の電球に比べて発光量あたりの消費電力も少なくすみます。

電気代の節約や、省電力な点が地球温暖化対策につながるため、街中のイルミネーションや信号機などいろいろなところで取り入れられています。

従来LEDが発光できる色は、赤やオレンジが主流でした。その後、緑や青色といった色に発光するLEDも登場します。

内部にガラス質を持っていないために振動に強く、金属劣化や断線がない限り寿命も長いため屋外の装飾用サインなどにも利用されています。

日本人が開発、ノーベル賞を受賞

2014年、青色LEDの発明と実用化に貢献したとして、赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の3名がノーベル物理学賞を受賞しました。

彼らの研究によって作られた青色LEDは、寿命が蛍光灯の4倍で、消費電力は従来の電球と比べて10分の1となっています。

1986年にまず、赤崎勇氏と天野浩氏をはじめとする研究チームが青色LEDに必要な高品質結晶の生成技術の発明に成功し、これを元に、1993年に中村修二氏が世界で初の実用的な高輝度を発する、青色LEDを発明するに至りました。

青色LEDはなぜノーベル賞を受賞した?

前述した通り、青色LEDを開発した日本人3名は2014年にノーベル賞を受賞しました。

青色LEDの開発がノーベル賞を受賞できた理由を解説していきます。

白色LEDが可能に

LEDは一般家庭でも、照明として利用されているように、珍しいものではありません。

ではなぜこれほどまでに青色LEDが注目され、ノーベル賞の受賞に至ったのでしょうか。公式の授与理由として、スウェーデン王立科学アカデミーは以下のように発表してます。

“赤崎勇、天野浩、中村修二は”効率的な青色発光ダイオードを発明し、明るく省エネルギーな白色光源を可能とした”

この発言からは、青色LED自体が役立つ発明であったというよりは、青色LED発明に伴って白色光をLEDで表現できるようになった技術こそが、ノーベル賞の審査基準である“人類に最大の利益をもたらす発明”に適うものであったということが見えてきます。

数多の科学者が挑戦してもなお、青色LEDの発明は30年もの間成し遂げられませんでした。これが成功したことにより、人類は新しい方法で白光をつくり出せるようになりました。結果として、より寿命が長く効率的な代替光源が入手できました。

ノーベル賞の公式サイトでは、白熱電球は20世紀を、LEDランプは21世紀を灯していくと表現しており、LEDランプの今後の社会への貢献が期待されています。

青色LEDの必要性、開発はなぜ困難を伴うのか?

そもそも、LEDの歴史は今から100年以上も前の1906年に始まりました。

この時は、イギリスの科学者ヘンリー・ジョセフ・ラウンド氏が炭化ケイ素に電流を流すと黄色く光ることを確認したというものでした。

その後、アメリカの科学者ニック・ホロニアック氏が赤色LEDを発明します。そしてさらに、黄、橙、黄緑などの各色LEDが誕生していきました。

白い光を生み出すには、光の三原色である赤、青、緑が必要です。その後世界中の科学者たちが、白色を実現するための青色LEDの研究に必死になりました。

日本でも同じような取り組みが行われてきました。

1964年、赤崎勇氏は、国内には東京大学にしかないといわれていた珍しい実験装置が備えられていた松下電器産業が新設した研究所にて、青色LEDの主要な材料となる「窒化ガリウム」と出会い、青色LEDの開発に邁進します。

世界でも青色LED実現のために窒化ガリウムに目がつけられていましたが、窒化ガリウムは繊細で扱いが非常に困難でした。そのため、多くの研究者が中止したり他の研究に転向していきました。

赤崎氏の研究環境も例外ではなく、失敗を繰り返す毎日だったと言います。成功の兆しは見えず、社内からは批判を浴び、組織のトップからはやめるようにとの命令を受けました。

しかしそれでも「好きなことをやる」と心に決めていた赤崎氏は研究をやめようとは思わず、1981年に研究所に辞表を提出、元いた名古屋大学に戻り研究続行します。そして、当時名古屋大学院生だった天野浩氏と出会いました。

実験を繰り返し、開発に成功

赤崎氏の「好きなように好きなことを研究したい」という強い思いは“弟子”である天野氏にも受け継がれました。赤崎氏は天野氏に対し事細かな指示出しはせず、研究の目的や目標を共有するだけにとどめ、研究のための環境を整えるなどのサポートに努めていました。

環境の整備として、より細かな研究が必要な場合には、赤崎氏は名古屋大学にはない精度の高い計測装置が揃っていたNTT武蔵野研究開発センターに問い合わせ、インターンシップ制度を利用し天野氏を受け入れてもらうよう依頼していたそうです。

天野氏は研究に没頭し、与えられた研究の機会を無駄にすることはありませんでした。構内への立ち入りが大学当局から禁じられた元旦以外は研究室での実験を重ね、実験回数は2年間で1,500回以上にも上りました。

ある日、いつも通り実験を始めようとしていましたが、機械の調子が良くなく、天野氏は独断で機械が不具合のまま実験を続行しました。実はこれが契機となり、ついに青色LED開発の突破口を開くことになります。

中村氏は「高輝度」青色LEDを開発

そして、赤崎氏・天野氏によって開発された青色LEDを製品化にこぎつけたのが中村修二氏です。

それまでは実用化できるレベルの高輝度な青色LEDの開発は21世紀になると言われていました。

しかし、中村氏は窒化ガリウムの大きな結晶を作製するために必要な技術を開発しました。このおかげで、20世紀のうちに青色LEDの製品化が実現したのです。

青色LEDの業界利用動向

ここまで青色LEDの歴史について見てきました。ここからは今後の青色LEDの動向について見ていきます。

スマートフォンやデジタルサイネージに利用

青色LEDが発明されたことによって実現できるようになった色の代表は「」です。

光の三原色、赤、青、緑を混ぜることでできる「白」の実現に青は必須の色です。よって現在、広く使われるようになった白い光のLEDも、青色LEDの発明なしには実現できなかったと言えます。

LED照明は、従来の白熱灯に比べて消費電力は格段に小さく、寿命も長いです。こうした特徴から、現代の生活には欠かせないスマートフォンなど携帯電話のバックライトにも使用されています。現在のスマホの小型・軽量化は、青色LEDの発明があったからこそ可能となったものです。

また、街中で見かける信号や道路交通表示板、屋外ビジョンなどにもLEDは使用されています

LED研究の今後は?

現在でも天野氏は、発光ダイオードの研究を進め、さらなる効率化を目指していると言います。

具体的には、現在50%程度の発光効率である発光ダイオードを、限りなく100%に近づけることと、黄色発光ダイオードの研究を進め、人類が作れる究極の光源を開発することです。

また赤﨑研究室出身で、天野氏の2年後輩にあたる上山智氏が代表を務めるエルシード株式会社は、天野教授の研究成果をもとに委託開発テーマである「LEDモスアイ構造製造技術」に取り組み、LEDの光出力を大幅に向上させています。

エルシード株式会社は、国立研究開発法人科学技術振興機構による大学発ベンチャー創出事業「モノリシック型高出力高演色性大型白色LEDの開発」を通じて2006年に設立されたベンチャー企業です。

このように赤﨑氏から始まったLEDに関する研究は、若い研究者に引き継がれ、大きな実績に結び付いています。

デジタルサイネージに不可欠な青色LEDは日本人研究者が実現

ここまで見てきたように、デジタルサイネージや携帯の液晶画面に使われる青色LED日本人研究者により生み出され、今では私たちの生活には不可欠なものとなっています。

ノーベル物理学賞を受賞した赤崎氏、天野氏、中村氏による研究は私たちの生活に大きく関わり、特に青色を開発したことは革新的な出来事だと言えるでしょう。

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なぜ青色LEDはノーベル賞を受賞したか?日本人による革命的発明の裏側
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なぜ青色LEDはノーベル賞を受賞したか?日本人による革命的発明の裏側
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地球温暖化対策としてLED照明の導入が推奨されています。そのLEDの中でも、イルミネーションなどに用いられている青色を発する、青色(あおいろ)LEDと呼ばれる照明について紹介します。
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